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2018.07.06

【開催レポート】Human Capital2018 特別セッション

 

一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会は2018年7月6日(金)、日本最大級の人事カンファレンス「Human Capital2018」において、特別セッションを開催しました。満席を超える多くの方々にご参加いただき、当協会の理事・上席研究員から知見や事例を共有させていただきましたので、以下に各社の取組み発表とパネルディスカッションの様子をお伝えします。

 


アクセンチュア 人事部マネジャー
ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員
佐藤優介氏

【自社の取組み①採用面接】
・管理職以上のトップパフォーマーから、共通因子を抽出し、「未来のアクセンチュアに必要なDNA」として提示(https://www.accenture.com/jp-ja/careers/students-graduates-dna
・応募者に共感する「DNA」とその理由を答えてもらうことで、ミスマッチを防ぐと共に人物理解に活用

【自社の取組み②内定辞退者予測】
・内定者の行動解析によって、8割以上の確実さで内定辞退と相関関係のある行動因子が特定できた
・実際に翌年、特定した行動をとった内定者をフォローしたところ内定辞退率が減少した
・解析に使ったのは、人の性格等の内面情報データと行動データ。この2つの組み合わせだけでできることは色々ある
・何から始めればいいのかに迷う方には、まずは参考書として『USJを劇的に変えた たった一つの考え方』(角川書店、2016、森岡毅)を推薦したい
・どんなアナリティクスのツールを使うかで悩まれる方も多いと思うが、エクセルでも十分にできる分析もある。これから協会の活動などの中で、そんなことも伝えていきたい


パーソルホールディングス グループ人事本部
タレントマネジメント部 タレントマネジメント企画室室長
ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 上席研究員
山崎涼子氏

・人事情報分析(データの一元化・見える化・分析等)は、未来を予測し、先手を打つ人事を実現していくもので、タレントマネジメントの一部でもある
・取り組みは「可視化」と「予測」の2つに大別できる
・「可視化」は、足元にあるデータを正しく集計し、わかりやすくビジュアライズすること
・「予測」は、既存のデータ解析から未来を予測して、先手を打つ人事施策を提案し実現していくこと
・データアナリスト1名を人事部員として採用し、人事部の中で分析と施策を一緒に進めていく体制をとっている
・この体制にしたのは、データサイエンスを推進していくために必要といわれる3つの力(「ビジネス力」「データサイエンス力」「データエンジニア力」)のうち、人事にとっては「ビジネス力」も磨いていくことが課題だと考えているため

【自社の取組み】
・クラウド環境の構築
・社員意識調査のフリーコメントをテキストマイニングすることで、グループ会社毎の課題をキーワードで整理、経営層へ共有
・ストレスチェックを組織ごとに集計し、労働時間等の人事データと掛け合わせて問題を深掘り
・退職予測やマッチング予測をして、社員フォローや適材適所に活かす
・足元のデータを使うだけでも、組織ごとにまとめたり他のデータと組み合わせてみることなど、意外にいろいろな意味の深掘りができる


日立製作所 フェロー
ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 理事
矢野和男氏

・データが燃料だとすると、人工知能(AI)はエンジン。この2つが揃えば人事のあり方を大いに変えていくことが可能
・なぜピープルアナリティクスをするのか、その目的が大事
・データの活用は、一律管理から脱し、個別な対応を実現するための、物理的な限界を超えるもの
・アウトカム(結果)だけは決めておく必要はあるが、「その過程は千差万別でOK」と人事側が発想を変えることが必要
・ドバイでは、国の目的を「国民の幸せ」というアウトカムとを定め、それに合致する法令かどうかをアセスメントしている。データがあれば人の認知バイアスを排除することもできる
・人の幸せが図れるのか、という疑問もあると思うが、できる

【自社の取組み】
・活動量センサーのデータとデータから意味を読み取る
・「ハピネスプラネット」というスマホアプリを使って日立グループで行ったハピネス度を競うイベントを開催
・意味がないようにみえるデータであっても、集めてパターンを読み解くと上位の意味が見えてくる
・会社を超えてハピネスを競う取り組み(「ハピネスプラネット/働き方フェス」)を実施し、8月にもまた実施する。無料なので、興味のある企業様は是非参加してほしい


リクルートキャリア 事業開発部
ソリューション開発グループ ビジネスプロデューサー
ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 副代表理事
加藤茂博氏

・人事データの活用はまだまだ充分ではないというのが当協会の基本的な問題意識
・人事データが充分に活用されていないということは、人材が充分の活用されていないということと同義
・この状態をよりよい方向に進めていくために、①人事データの活用を促進 ②適切なHRテクノロジーを活用すること ③人事情報取り扱いのルールをつくること ③それができる人材の育成 が必要と考えている

 


パネルディスカッション

加藤:ピープルアナリティクスにはどのような意味があると思うか?

佐藤:
・人事ノウハウの多くが属人化していると感じ、それは改善するべき
・そのためには見える化して、皆で問題を認識して論理的に考えていけることが必要
・ピープルアナリティクスはその仕組みをつくるために重要であるし、期待もしている


加藤:ピープルアナリティクスによって人材活用はどう変わっていくと思うか?

山崎:
・まだまだこれからという状況ではあるが、今まではほとんど対策が打てなかった人材課題に対しての打ち手が、ピープルアナリティクスによって実現した(離職予防等)
・少子高齢化の中で、人材の確保は今後の企業の命題になるはず。その意味でもピープルアナリティクスが活用されていくのでは。

 


加藤:人事は実験が許されない部署と言われがちだが、矢野さんは先ほど実験をせよと言われた。そして、認知バイアスの入らない行動データを活用するというお話もあった。その関係は?

矢野:
・人は一人ひとり皆違う。同じ人であっても今日と明日は違う。一律な管理をするというのは全くナンセンス
・しかも個別性が高い人事にするためには、個人にあわせたアクションやフィードバックが必要で、そのために他の人の認知を介さないデータが必要
・本人へのフィードバックもきめ細かく行われないといけない。そのためにテクノロジーが力を発揮する


加藤:人事はどのように変わるべきだと思うか?

佐藤:
・中央集権管理から自律型組織へ。人事は社員を管理するのではなく、いかに自律支援するのかが求められていく
・「HR3.0(人事のプロフェッショナルたちがデータの分析結果を基に人事施策を打ち、フレキシブルに仕事を進めていくHRへ)」という考え方が登場している。このHR3.0に向かうために、人事の成長が求められる

山崎:
・人事情報分析の役割責任は、今まで見えなかったものを見えるようにすること
・経営が見えていない課題や今後進めていくべきことを、人事から上げていくことによって、人事の立場が経営のサポート役から経営をリーディングしていく立場へ

矢野:
・「今という時は歴史上、新しいことを始めるためのベストタイミング」
・人事にとってもその通りで、人事はその主役になっていくと考えるのがいい
・財務やテクノロジーなど様々なものの考え方を流用し、取り込んでいくことが必要であり、変わることを求められるすべてのビジネスマンの先頭に立って変わり続けるべきだし、人事にとってもそれがいいことになるはず


研究員より

「人事は変わるべき」ということ自体は、以前から言われ続けてきました。しかしそれは、努力を促す掛け声の域を出ていなかったのかもしれません。ようやく今、ピープルアナリティクスとHRテクノロジーの登場によって、人事の役割やできることが大きく変わり始めました。今、私たちがどのような選択をするかによって、未来が変わります。よい選択をするための活動をしていきたいと思います。
執筆:ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 研究員
植松 真理子

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