【開催レポート】7/22(水) 2020年7月度ピープルアナリティクスラボ

VUCAの時代に適応するための「信頼」をデータ分析する

ピープルアナリティクスラボとは、ピープルアナリティクスの概要・潮流・有用性を理解し、自社の取り組みに活用していただく(または委託の判断軸を持つ)ための会員向けベーシック講座です。2020年度のピープルアナリティクスラボは「より科学的・高品質なPA」を目指したテーマで活動していきます。2020年7月度は「VUCAの時代に適応するための「信頼」をデータ分析する」をテーマとして開催しました。

オンラインで出席いただいた会員の皆様に向けて、オンラインで出席いただいた会員の皆様に向けて、協会上席研究員の鹿内さんから「不確実な時代に不可欠な「信頼」をデータ分析する」、Digital HR Competition2019 ピープルアナリティクス部門グランプリの中島さんから「センシングプラットフォーム”NAONA”を活用した採用面接の質の向上」と題して、「信頼」という一見すると測れないことを、どのように計測しデータ分析していくかについてお話しいただきました。また講演後は会員の皆様からの質問により、活発な議論がなされました。

 


 

不確実な時代に不可欠な「信頼」をデータ分析する
株式会社シンギュレイト 代表取締役 鹿内 学 氏

 

鹿内さんからは、データサイエンス、認知神経科学、人材・組織の実務の3つの専門性をもとに、信頼の理論と実証研究をご紹介いただき、信頼への会話行動データによるアプローチについて講演いただきました。

 

■信頼の理論・実証研究の紹介

・現在は企業組織のあらゆる役割、機能でイノベーションが求められており、これは研究開発や新規事業だけでなく、工場やマーケティング、人事でも同様である

・現在の変化が大きく不確実な社会環境・経済環境は、Volatility(変動性)、Uncertainty(不確実性)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性)から頭文字を取ってVUCAと呼ばれる

・VUCAの環境では過去の成功体験が通用せず、新しいモノ・コトが、わずかな確率で成功する。つまりイノベーションの価値が高まると言える

・人事においてイノベーション(新結合)とは、人と人との新しい関係および新しい関係性である

・新しい関係・関係性を作れる人材を信頼人材と呼んでいる。この信頼人材は、「信頼される人材」の意味ではなく、「相手を信頼する人材」のことである

・ある心理学的な実験では、信頼人材は不確実性の高い環境の中でも、新しい人間関係を作り出しやすいとの結果が出ている。また信頼人材は相手に対する感受性や予測能力(社会的知性)が高く、失敗を回避しやすいと言える

・一方で、企業組織とは、内部での取引費用(コミュニケーションコスト)を下げる性質がある。特に流動性がなくなった組織は、社会的知性を必要とせず、そのようなスキルが育たない環境とも言える。このような環境を社会心理学者の山岸俊男は安心社会と呼んだ

・不確実な環境下では安心社会は組織そのものが淘汰されてしまうため、安心社会から、新しい関係・関係性を作れる信頼人材を評価する信頼社会に転換していくこと、あわせて新結合を促進するための専門性を重んじることが必要である

 

■信頼への会話行動データによるアプローチ

・現在、イノベーションを担う信頼人材をデータから発見することを目指し、会議や1on1ミーティングにおける会話データを収集・分析している

・1on1におけるマネージャーとメンバーそれぞれの発言時間から、1on1の有効性を検証している。マネージャーの発言時間が短く、メンバーの発言時間が長い状態が良いコーチングができている状態と考えている

・1on1では業務の話をするのではなく、アイスブレイクから入り、振り返りや承認を示した後、主題として目標・評価に関するマネジメント、能力やキャリア、働き方・チーム体制、チームの戦略・方針について話をした上で、ネクストアクションを決めるような流れとするのが良いと考えている

 


 

 

センシングプラットフォーム”NAONA”を活用した採用面接の質の向上
村田製作所 IoT事業推進部 データソリューション企画開発課 中島 彰 氏

中島さんからは、実務におけるマイクセンサーを用いた実証実験のご経験をもとに、データを活用した採用面接と面接官分析について講演いただきました。

 

■プロジェクトの背景

・社会環境と産業構造の変化により、人事には企業成長に貢献する「攻め」の人材マネジメントが求められている。この実現のために、これからの人事には、テクノロジーとアナリティクスを活用したData-driven HRが重要である

・人事におけるテクノロジー活用(HR-Tech)の中でも、村田製作所はIoTに強みがあり、IoTによるデータ収集とその活用でピープルアナリティクスの発展に貢献する

 

■実証実験の概要

・センシングプラットフォーム”NAONA”を面接会場に設置し、約100回の面接を実施した。ここから発言の量、長さ、テンポや発言の感情といったデータを取得・可視化・分析の上、面接官にフィードバックすることで、面接スキル・面接の質の向上を目指した

・NAONAは場の雰囲気や人と人との親密度などの関係性情報を取得することを目的としたもので、会話自体を収集・保存するものではないことに特徴がある

・当時、採用をめぐる課題認識として人材獲得競争の激化があり、面接の印象を良くして転職希望者の入社意欲を高めるスキルが面接官に求められていたことが実証実験の背景となっている

・「質の高い面接」を「動機付け」と「見極め」ができている面接と定義し、「動機付け」は応募者アンケート、「見極め」は面接官アンケートによって測定することとした

・「動機付け」と「見極め」についてデータ収集した結果、自社の課題として、見極めはできている一方で動機付けができていない可能性があることが明らかになったため、センシングプラットフォーム”NAONA”を用いた詳細な分析を行うこととなった

 

■データ分析

・他社と比較して、自社の面接官は発言テンポ(秒/回)が短く、応募者・面接官ともに感情値が低いケースが多かった。つまり発言がブツ切りで、面接が盛り上がっていない様子がみられる。ここからは、もっと応募者を惹きつけるような面接スキルが求められることがわかる

・自社内でも面接官の人数によって、面接官が1人だと発言テンポ(秒/回)が長く、応募者・面接官ともに感情値が高いケースがあった。すなわち、1対1の面談形式のほうがインタラクティブになり、感情値も高くなる傾向にあると言える。ここから、優秀な応募者の場合は1対1の面談で口説きにかかると効果的なのではないかとの仮説が立つ

・応募者アンケートを用いて入社意欲に影響を与える変数を明らかにするため回帰分析を行った。その結果、仕事への理解が入社意欲を高めることがわかった。ここから、面接において仕事内容について詳しく説明して理解を促進することで、入社意欲を向上させることができるのではないかと考えている

・以上の分析結果から、「動機付け」の強化施策として、最終面接の後に、1対1の面談形式で仕事内容を詳しく説明する「職務マッチング面談」を実施することとした

・別途、応募者アンケートで評価が上位20%の面接官について、その傾向の分析を行った。その結果、「動機付け」が得意な面接官は、応募者と発言テンポが同調していることがわかった。また下位20%の面接官については、面接官研修を行うことでフォローした

 

■今後の課題

・今後は施策実施前後でのA/Bテストを実施していく予定

・NAONAは働き方改革、人事研修、採用面接などHR分野に加え、対面接客や会議状況のフィードバック、関心度モニタリングといったユースケースが検討されている

 

開催概要

日時:2020年7月22日(水)11:30〜13:00

会場:オンライン (Zoom)

参加者:44名 ※法人正会員のみ

 

講師:株式会社シンギュレイト 代表取締役 鹿内 学 氏(協会上席研究員)

演題:「不確実な時代に不可欠な「信頼」をデータ分析する」

 

講師:村田製作所 IoT事業推進部 データソリューション企画開発課 中島 彰 氏(Digital HR Competition2019 ピープルアナリティクス部門グランプリ)

演題:「センシングプラットフォーム”NAONA”を活用した採用面接の質の向上」

 

主催・問合せ先

一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 事務局