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2020.09.12

【開催レポート】データアナリティクスは人びとを幸せにするのか?〜スポーツ×人事×倫理〜

今年の10月、11月に開催されるDigital HR Competitionに先立ちまして、プレイベントを開催しました。

Digital HR Competitionは、「Academia」(理論)と「Technology」(技術)と「Service」(実務)の垣根を越えて、「労働市場における社会課題の解決」をテーマにしたコンペティションです。今年で3年目。コロナ環境下ということもあり、今年は完全オンライン開催をすることになりました。

今年のテーマは、「データと倫理感」。

どんなにTECHNOLOGYが発達しても、扱う側の人間のリテラシーが向上しない限り、本来の目的は達成できないのではないか?あるいは、気づかぬ間に大切なものを失ってしまうのではないか?

また、TECHNOLOGYの進化に、法律などのルールが追い付いていかないこともあります。法律ではなく倫理による判断が必要なこともあるでしょう。そんな時代だからこそ、考えておきたいテーマです。

今回のイベントでは、「スポーツ」と「HR(人事)」という全く異なる分野でヒトのアナリティクスを行っている専門家と、個人データを法と倫理の視点から取り扱う弁護士をお招きし、データアナリティクスと倫理、両面の視点から議論をしていただきました。

 

【パネリストによるプレゼンテーション】

 

HR x データ活用 フジクラにおける取り組みのご紹介

~社員が活き活きと働いている会社を目指して〜

株式会社フジクラ健康社会研究所 代表取締役CEO 浅野 健一郎 氏

 


浅野様からは、データにもとづく職場環境の改善を実践されてきたご経験をもとに、企業人事アナリティクスの実務について講演いただきました。

 

■ゴール設定

・経営理念として、社員が活き活きと働く会社を実現することがゴール

・活き活きした状態とは、「仕事に誇り(やりがい)を感じ」「熱心に取り組み」「仕事から活力を得て」活き活きしている状態と定義し、それを継続的に測定することにした

 

■アプローチ

・職場環境へのアプローチを主な施策とした

・データを用いて、労働環境について定量的・客観的な現状把握を行った

・計測・分析(モニタリング)、仮説・予測(モデリング)、介入・誘導(制御)のサイクルを回すことで改善を図った

・モニタリングの具体例として、プレゼンティーズム(不調感による生産性の低下)に関係する因子を調査したところ、身体活動の低下が生産性低下に影響している可能性が明らかになった

・モニタリングの結果を他の調査結果などからも検証した上で、モデリングのため、社員に運動機能検査を行ったり、歩行行動のデータを収集したり、ストレスチェックのデータを突き合わせたりといった方法でデータを拡充した

・仮説として、長時間座りっぱなしで動かない労働環境が好ましくないのではないかと考え、介入のための施策としてオフィス環境の改善を行った

・社員の活動量やコミュニケーション量を増加させるような工夫を施した上で、オフィス内に設置したセンサーによりオフィスの特定の場所の利用率を測定し、レイアウトの妥当性を検証した

・健康行動と生産性の関係を確認したところ、相関が認められた

 

 

 

スポーツアナリティクスにおけるデータ活用事例

合同会社FLAGSTAND 代表 千葉 洋平 氏

 


千葉様からは、アスリートをサポートするスポーツアナリストとしてのご経験をもとに、スポーツアナリティクスの実務について講演いただきました。

 

■スポーツアナリストの業務

・パフォーマンスに関わる要素を「見える化」する、先入観や思い込みを発見する、予測やシミュレーションを行うといったことを通じ、データの持つ価値を最大化し、意思決定に貢献する

・問題・課題を発見し、解決策を策定し、解決していくために、設計、収取、分析、伝達、検証のフローに沿って業務を進めていく

・設計では、フェンシングのパフォーマンス発揮にまつわる要素を構造化・整理した上で、「問い」を作っていく

・取り扱うデータとしては、試合および練習の映像、ゲーム分析データ(攻撃イベントに関わる情報)、骨格・体組成データ(体重、体組成、身長など)、コンディションデータ(疲労、睡眠時間、痛みなど)、フィジカル能力関連データ(筋力、パワー、フィールドテストなど)、傷害関連データがある

 

■フェンシングのパフォーマンス分析

・映像を使い、すべてのシーンで「何が起こったのか」をタグづけしていく

・データを可視化して、多視点で、構造的に分析することが重要

・データをスタッフや選手に共有するとともに、ヒアリングを行い、納得して意思決定することをサポートする

・アプリを利用して試合・練習の動画のストリーミングやコンディションチェックが容易にできるようにしている

・コンディションチェックのデータを利用してトレーニングスケジュールと現状の乖離を感知することができる

・データの活用には、当事者の納得感(「ありたい自分」にとって価値があるのか)と時間軸(どの未来に必要か)を根幹にすることが重要だと考えている

 

 

 

人事データをめぐる法と倫理
弁護士 大島 義則 氏

 


大島様からは、個人情報保護法改正の対応に関する支援のご経験などを踏まえ、人事データをめぐる法と倫理について講演いただきました。

 

■個人情報保護法の体系イメージ

・民間分野と公的分野に共通する個人情報の保護に関する基本方針などがあり、その中で民間分野は、個人情報保護法とガイドラインにより規律されている

 

■倫理としての人事データ利活用原則

・個人情報の領域において、現状、法規制がなされていない部分も存在する

・規制されていない領域についても、倫理的な面からカバーすることが必要になってきていることを踏まえ、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会では人事データ利活用原則を策定した

・人事データを用いたプロファイリングにより、プライバシー侵害や差別の再生産が行われるリスクに対応する必要がある

 

■人事データをめぐる仮想事例

・採用活動において、応募者作成のエントリーシートおよびテストの受講結果をAIに読み込ませて採点し、選抜・採用することを計画している事例を検討

・このAIにより、応募者の知的水準、応募者の志望度・内定辞退率、応募者の精神傾向などを測定することができる場合、個人情報保護法上で何か問題はあるか。また個人情報保護法に照らして合法だとしても個人情報保護意識の高まりを受けた炎上リスクはあるか

・個人情報保護法上の主な留意点としては、応募者からの個人情報取得に対する規制、利用・保管規制、第三者提供規制に留意する必要がある

・倫理的な問題の観点としては、人間関与原則を踏まえるべき。またプロファイリングでは、精神傾向の推知(推測)をどこまでしていいのかは論点となる。あわせてAIによる採点結果をどこまで開示する必要があるのかについて、採用の自由がある人間による採否の決定とどこまで異なる扱いをするべきかという議論が生じる

 

 

【パネルディスカッション】

パネリスト3名により、以下のような議題で活発なディスカッションが行われました。

・データ取得・分析にあたって倫理面で留意しているポイント

・データ取得についての法的な原則と実務

・データ保管・閲覧における権限・範囲設定の注意点

・データ取得・利用における同意の形骸化の問題と利用目的の明確化・具体化

・Win-Winの関係が構築できる場合のデータ取得同意とそうでない場合の差異

・データ分析結果の利用と安全配慮義務の関係

・スポーツアナリティクスにおけるポテンシャル予測の扱い

・データポータビリティ権に関する倫理的配慮

・個人データの利用方法としての個人パフォーマンス向上と組織パフォーマンス向上のバランス

・競合組織へのデータ持ち出しの対策

 

【開催概要】

日時:2020年9月8日(火)17:00〜19:00

会場:オンライン (Zoom)

参加者:63名

 

17:00~17:10 冒頭挨拶、イベント趣旨のご紹介等

17:10~18:30 登壇者によるプレゼン、パネルディスカッション

18:30~18:45 質疑応答

 

【登壇者略歴】

浅野 健一郎

1989年藤倉電線株式会社(現株式会社フジクラ)に入社。光エレクトロニクス研究所に配属され光通信システムの研究に従事。2011年よりコーポレート企画室で健康経営の企画立案に携わり、2014年より人事・総務部健康経営推進室。2019年6月より株式会社フジクラ健康社会研究所 代表取締役。2019年10月より一般社団法人社会的健康戦略研究所の代表理事を兼任。現在、経済産業省 次世代ヘルスケア産業協議会 健康投資WG専門委員、厚生労働省 日本健康会議 健康スコアリングWG委員、厚生労働省 肝炎対策プロジェクト実行委員他、経済産業省、厚生労働省等の委員を多数兼任。

 

千葉 洋平

2009年より独立行政法人日本スポーツ振興センターにて、フェンシングを中心にスポーツアナリストとして活動。ロンドン五輪では日本フェンシングのメダル獲得に貢献、リオデジャネイロ五輪を経て、現在は東京五輪へ向けてフェンシング協会強化本部アナリスト、日本テニス協会強化・情報委員として活動している。一般社団法人日本スポーツアナリスト協会理事として、スポーツアナリストやスポーツアナリティクスの普及・啓蒙活動も行う。KEIO SDM Sports X Leaders Program修了。

 

大島 義則

弁護士(第二東京弁護士会。長谷川法律事務所)。慶應義塾大学大学院法務研究科 非常勤講師、広島大学大学院人間社会科学研究科客員准教授。元消費者庁総務課課長補佐。主な著書として、『消費者行政法』(編者・分担執筆。勁草書房、2016年)、第二東京弁護士会情報公開・個人情報保護委員会編『AI・ロボットの法律実務Q&A』(編集長・分担執筆。勁草書房、2019年)等。

 

【主催・問合せ先】

一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 事務局

e-Mail:info@peopleanalytics.or.jp

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