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2018.12.11

【開催レポート】ピープルアナリティクスで変わる働き方とサイバー文明(第7回ピープルアナリティクスラボ)

ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会と慶應義塾大学サイバー文明研究センターは、今後の共同と連携を記念して共同セミナーを開催しました。今回のセミナーでは、ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会協会名誉理事であり、PeapleAnalytics研究の提唱者の一人であるBen Waber氏をお招きして、基調講演をしていただきました。当日の開催報告をいたします。

【開催概要】ピープルアナリティクスで変わる働き方とサイバー文明
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日 程 :2018年12月11日(火)
時 間 :13:30~16:30
会 場 :慶應義塾大学 三田キャンパス 西校舎ホール

共催:慶應義塾大学サイバー文明研究センター、一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会
後援:慶應義塾大学グローバルリサーチインスティテュート(KGRI, Keio University Global Research Institute)

【Agenda】
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13:30  開会のご挨拶 安井正人氏(慶應義塾大学医学部教授 KGRI所長)
13:45  ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会について
13:50  講演:ベンウェイバー氏(Humanyze CEO)
15:00  プレゼンテーション:山本龍彦氏(慶應義塾大学法務研究科教授 KGRI副所長 ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会理事)
15:20  休憩
15:40  対談(ファシリテーター:山本龍彦氏)
國領二郎氏(慶應義塾大学総合政策学部教授 常任理事)、ベンウェイバー氏(Humanyze CEO)
16:10  質疑
16:20  閉会のご挨拶 國領二郎氏
16:30  懇親会ご挨拶 駒村圭吾氏(慶應義塾大学法学部教授 常任理事)
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開会のご挨拶 安井正人氏(慶應義塾大学医学部教授 KGRI所長)

” HOW PEOPLE ANALYTICS CHANGES WORK STYLE AND CYBER CIVILIZATION “

Cosponsorship :Keio University Cyber Civilization Research Center, People analytics & HR Technology Association
Auspices:KGRI, Keio University Global Research Institute
Date: Tuesday, December 11, 2018
Time: 13:30 ~ 16:30 (Open 13:00〜)
Location:Keio University Mita Campus, West School Building Hall

Agenda
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13:30  Opening address:Masato Yasui (KGRI Director, Keio University School of Medicine Professor )
13:45  About People analytics & HR Technology Association
13:50  Speech:Ben Waber(Humanyze CEO)
15:00  Presentation:Tatsuhiko Yamamoto (KGRI Deputy Director, Keio University Law School Professor , People analytics & HR Technology Association Director)
15:20  break
15:40  Talk Session
Jiro Kokuryo(Keio University Faculty of Policy Management Vice President Professor), Ben Waber(Humanyze CEO)
Facilitator:Tatsuhiko Yamamoto (KGRI Deputy Director, Keio University Law School Professor , People analytics & HR Technology Association Director)
16:10  Q&A
16:20  Closing address Jiro Kokuryo(Keio University Faculty of Policy Management Vice President Professor)
16:30  Closing
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[基調講演] humanyze社 CEO ベンウェイバー氏

◆なぜ組織改革が難しいのか?
経営者は「毎日社員が何時間くらい働いていますか?」「誰と誰が仲良いですか?」といった簡単な質問に答えることができない。その理由は単にデータが不足しているからで、この問題の解決策がPeopleAnalyticsである。人が数百人数千人の人の行動を観測することは不可能。そこで、センサーを活用して社内で何が起きているのかを観測し、組織運営に役立てることができる。

◆People AnalyticsとHR Analyticsは別物
[People Analytics] ・行動データ+文脈的知識
・ビジネスに関わる問題を様々なデータを駆使して解決
・仮説を構築し、テストによる検証
・基礎的な運営方法
・多角的アプローチ
[HR Aalytics] ・アンケート結果を独立したデータとして使用
・人材に関する問題を人事的観点で集めたデータを使用して解決
・業界で「最適」とされている方法を適用
・ベンチマークに従って運営・測定
・状況によってカスタマイズされていない「万能薬」的な手段

PeopleAnalyticsの役割は、組織に関するすべてのことをデータを生み出す行為だと捉え直し、組織や働き方に関する全てのことに対してABテストで検証できるようにすることである。PeopleAnalyticsの活用事例についての詳細はベンウェイバー氏の著書[職場の人間科学: ビッグデータで考える「理想の働き方」]参照。

 

[プレゼンテーション] ピープルアナリティクスと個人の尊重
慶應義塾大学法務研究科教授 KGRI副所長 山本龍彦氏

前近代と近代の対比という視点から、ピープルアナリティクスと個人情報の取り扱いについての課題や議題について解説。ピープルアナリティクスの発展と活用により、個人の尊重が疎外されるのではないか。個人の尊重原理の実現のためにはHRテック及びPeopleAnalyticsの活用ガイドラインを作るなど、適切に整備をしていくことの重要性について説明。

 

[対談] 慶應義塾大学総合政策学部教授 常任理事 國領二郎氏
humanyze社 CEO ベンウェイバー氏

(ファシリテーター: 山本龍彦氏)

◆PeopleAnalyticsと経営学について
(國領) ピープルアナリティクスと経営学は全く別物なのか。
(Ben) ピープルアナリティクスと聞くと、個人に注目するものと感じるかもしれないが実は違う。人間関係など組織としての人間に注目するもので、経営学とも繋がってくる。
(國領) PeopleAnalyticsで会社の文化が測れるのか。
(Ben) 文化を客観的に定義することは不可能。PeopleAnalyticsが分析しているのは人の行動データ。同じ人が別の会社に移動すると行動も変わる。

◆個人の行動データ取得について
(國領) データ取得に関して、日米欧で違いはあるのか。
(Ben) GDPRを見てわかるように、ヨーロッパでは個人主義の考え方が徹底されていて、データは個人のものだという意識が確立されている。
(國領) 個人主義を徹底することで、競争力を維持できるのか。
(Ben) 欧米では、データを取得する前にしっかりと個人と議論をしている。日本では、納得はされていてもしっかりと議論がされているとはいえない。会社は辞めることのハードルがとても高い。しっかりと事前にデータ収集に関する合意を形成していくことが大切。PeopleAnalyticsが悪用される事例が出てくる前に、しっかりとしたデータの取扱いに関する取り決めを作らなければ、業界自体が破壊されてしまう可能性がある。

(山本) PeopleAnalytics活用により組織の利益を向上させていく中で、個人はどのような位置付けになるのか。今までは個人の権利を守るだけでよかったが、近年になって守るべきプライバシーの定義が曖昧になってきた。データを基にしたプロファイリングで予測的にプライバシーを侵害できてしまう時代。
(Ben) 必ず、トレードオフが発生する。例えば社員の自殺確率が予測できても、その予測結果をクビにすることに使うのか、企業福祉の改善に利用するのかによって全く話が変わってくる。会社の責任はどこまでなのかということを、ある種極端な議論を通して明確にしておくことが必要になってくるのかもしれない。事前に目的を決めて分析に取り組むことが大切。
(國領) どのように目的を定義すればいいのか。
(Ben) 組織と個人の関係性をどのように定義するかが問題になってくる。個人にも配慮しつつ、組織の利益に繋がることが大切。組織の利益だけを追求してしまうのは不健全。そうならないためにも、ゴールからの逆算で分析や予測に取り組むことが大切。目的意識のない分析は、結果として意図しない結論を導いてしまう可能性がある。

◆データ収集・分析ツールと分析結果への影響について
(國領) アメリカのツールを使って、日本のデータを分析しても結果はでるのか。
(Ben) データを分析して、その要因を特定することは万国共通のはずで、そこはツールによる依存はないだろう。しかし、データ分析の結果を受けて、見つかった課題の解決策は国はもちろん会社によっても異なってくる。


懇親会ご挨拶 駒村圭吾氏(慶應義塾大学法学部教授 常任理事)


[まとめ]

個人情報の取扱いに触れる内容で新しい学びが多かった。People Analyticsは人の生き方と密接に関わってくる分野で、関わる人間には高い倫理観と責任感が問われるものだと考えさせられた。データを取扱う者としては、悪意を持った人間が利用することで社会全体を破滅的な方向へ導きかねないものだということを十分に念頭に置いた上で、日々のデータ収集や分析に取り組むことが大切なのかもしれない。

執筆:薄田 祐大

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