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2020.08.24

【開催レポート】8/18(木) 2020年6月度ピープルアナリティクスラボ

ピープルアナリティクス実践・運用における組織デザイン

ピープルアナリティクスラボとは、ピープルアナリティクスの概要・潮流・有用性を理解し、自社の取り組みに活用していただく(または委託の判断軸を持つ)ための会員向けベーシック講座です。2020年度のピープルアナリティクスラボは「より科学的・高品質なPA」を目指したテーマで活動していきます。2020年8月度は「ピープルアナリティクス実践・運用における組織デザイン」をテーマとして開催しました。

 

オンラインで出席いただいた会員の皆様に向けて、協会研究員の多良さんから「ピープルアナリティクスの取り組みと推進チーム構築事例」、協会上席研究員の井上さんから「ピープルアナリティクス推進・運用における組織課題」と題して、ピープルアナリティクスを実践するための推進者および推進チームをどのように作っていくかについてお話しいただきました。

 

ピープルアナリティクスの取り組みと推進チーム構築事例

 

ソニー株式会社 多良 啓司郎 氏

多良さんからは、統計解析や機械学習などのデータ分析・マーケティングリサーチ領域および人事・HR-Tech領域における実務のご経験をもとに、自社でのピープルアナリティクスの取り組みについて講演いただきました。

 

■ソニーの人事ポリシー・人材についての考え方

・原点である設立趣意書に基づいて、「技術者の技能を最高度に発揮」「実力本位、人格主義」といった考え方をピープルアナリティクスに落とし込めるよう取り組んでいる

・過去の取り組みでも学歴不問採用、職種別採用や社内異動制度、新規事業立ち上げ支援制度などを整備し、社員個人をサポートする会社としての関係性を作ってきた

・HR-Tech / ピープルアナリティクスも『「個」に寄り添うを、テクノロジーと分析の力で徹底的に実現する』をコンセプトに取り組んでいる

 

■取り組みチームをどのように作ったか

・2013年~2014年頃に人事ビッグデータプロジェクトを実施したが、大きな結果は出なかった。具体的にはハイパフォーマーの分析を通じてハイパフォーマー育成のための施策を探ったが、十分なデータが揃えられず、兼務が多かったため人的リソースも足りなかった

・2017年から兼務でHR-Tech検討プロジェクトを立ち上げ、2018年から専任メンバーを追加した。2020年現在では新卒・経験者採用のメンバーもおり、取り組みを進めている

・組織はデータエンジニア、分析/予測、人事の3つの専門性を持つメンバーで構成されている

・データサイエンティスト、アナリスト、データエンジニアは内製している。これはPDCAを早く回すためである

 

■取り組み事例

・取り組みは可視化(何が起きたか)、要因分析(なぜか)、予測(どうなるか)、レコメンド・パーソナライズ(個に最適なのは何か)に分けられる

・具体的には、高エンゲージメント組織の特徴可視化、採用時パフォーマンス予測、研修のパーソナライズ・レコメンドといったテーマの分析を実施している

・その他にデータ分析の基礎研修やデータ基盤の構築も行っている

・当初は機能人事(採用、人材開発等)と兼務していたが、直近では各事業会社の人事との連携に注力している

 

■今後の課題

・上流から業務の効率化、意思決定の効率化、実行支援であるとすると、業務の効率化ではRPAなどサービスが増えてきたため、今後は意思決定の効率化や実行支援を強化していきたいと考えている

・ピープルアナリティクスはサポートや助言に留まることが多い

・人事の当事者意識と課題認識が最も重要であり、その人事の先にいる経営陣、マネージャー、社員の課題解決がゴールである

・テクノロジーや分析を自社課題の解決にどのように活用できるか、また運用に載せられるかを考えることが大事

 

 

 

 

ピープルアナリティクス推進・運用における組織課題

PwCコンサルティング合同会社 井上 卓也 氏

 

井上さんからは、組織人事領域のコンサルティングのご経験をもとに、ピープルアナリティクスのトレンドと必要となるスキル、人材の獲得・育成、意識、組織体制について講演いただきました。

 

■ピープルアナリティクスのトレンド

・2016年と2019年のサーベイ結果を比較すると、大企業を中心として、人材データ活用分析に取り組むことは当たり前になってきている

・データ分析・活用の対象は採用、配置、離職、組織風土、ワークスタイルなど人事のあらゆる領域に広がっている

・利用されるデータは基本的な人事データだけでなく、特に先進的な企業ではビジネスデータ、ワークスタイルデータ、健康関連データなどの活用ニーズが高まっている

・活用方法は、これまでの人事・経営層によるトップダウンで高度な予測などを推進する形に加えて、現場で継続的、リアルタイムに可視化した結果を参照できるようにし、組織的な取り組みを重視する形がトレンドになってきている

・多くの企業がピープルアナリティクスの「最初の一歩」の壁(やり方がわからない)を超えつつある中、人・組織が大きな課題になっている

 

■スキル強化

・ピープルアナリティクスに求められるスキルは「課題設定力(仮説力)」「データ化力(変数設定力)」「解釈/説明力」「分析手段選択力」の4つ。それぞれのスキルを有する人材のチームを設け、組織としてピープルアナリティクスを実現できる体制を構築することが必要

・データ活用人材のスキルはビジネス系、アナリティクス系、エンジニア系に分けられ、自社にどのスキルを有する人材が足りないのかを見極めることが重要である

・採用競争の激化によりHRデータアナリストの確保は容易ではなく、社内人材の育成やツール/外部ベンダーの活用などが必要となることが多い

 

■人材獲得・育成

・HRデータアナリストの採用が難しいことを踏まえ、既存人材である人事担当者のうち若手ポテンシャル人材を発掘し、HR-Tech担当の明確化と権限委譲を行ってHRデータアナリストに育成する方法がある。このとき人事部門として育成プログラムを企画・実施するのがベストだが、全社的なDX人材育成などのプログラムに参加させることも効果的である

・ピープルアナリティクスに人事以外の部門の専門人材を活用する事例も増えてきている。この場合は人材領域への興味の強い専門人材を選定することがポイントとなる

・外部リソースとして各種HR-Techツール、外部ベンダー、業務委託・学生の活用などが挙げられる。

HR-Techツールは「最初の一歩」の壁の突破に有効。外部ベンダーの活用は人事がやりたいことを明確化することが肝要となる。業務委託・学生はデータ分析の即戦力として、採用や社内調達が難しい場合に活用できる

 

■意識改革・チェンジマネジメント

・「分析よりもデータ整備を優先」としてしまうことが多いが、まずは既存のデータで可能な範囲で分析を行うことで、人材データ分析の意義を浸透させるとともに、必要なデータへの理解も深まる

・「経験と勘」はデータ分析で否定されるものではなく、「経験と勘」とデータ分析の融合が効果的である。特に仮説立案や分析結果からの示唆の抽出、施策の企画立案の際に「経験と勘」が有用となる

・自動化や効率化への期待が高まりやすいが、その点について過剰な期待を抱くことは避けるべき

・分析結果における「サプライズ」を期待させすぎない。分析の主なメリットとして、定量的な根拠に基づいた施策の優先順位付けなどを事前に共有しておく

・「PoCの壁」を突破するには、仮説と証明したいことの言語化、現場への有効性のアピール、アナリティクス機能の切り出しが効果的である。

 

■組織体制の整備

・データ分析の専門組織を設置する企業が増加傾向にある

・ピープルアナリティクスにおいても、データ管理やデータ基盤の整備、全社的なピープルアナリティクス方針の整合、人材の獲得・育成、専門性の高いデータ分析の実施、GDPRなど法制度への対応などに向けて、ピープルアナリティクス専門組織の設置が必要になってきている

 

■ピープルアナリティクス方針・計画

・ピープルアナリティクスを組織内に定着させるためには、組織・インフラ・育成・ガバナンスなどの要素が必要であり、人事としてピープルアナリティクス方針・計画を策定する企業が増えてきている

 

開催概要

日時:2020年8月18日(火)15:00〜16:30

会場:オンライン (Zoom)

参加者:50名 ※法人正会員のみ

 

講師:ソニー株式会社 多良 啓司郎 氏(協会研究員)

演題:「ピープルアナリティクスの取り組みと推進チーム構築事例」

 

講師:PwCコンサルティング合同会社 井上 卓也 氏(協会上席研究員)

演題:「ピープルアナリティクス推進・運用における組織課題」

 

主催・問合せ先

一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 事務局

e-Mail:info@peopleanalytics.or.jp

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