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2023.01.21

【開催レポート】HRテクノロジーソリューション部門 / Digital HR Competition2022



Digital HR Competition2022

「Academia」(理論)と「Technology」(技術)と「Service」(実務)の垣根を越えて、「労働市場における社会課題の解決」をテーマとして、好事例を共有し、より高い成果を求めていくべく、競い合い、学び合う場としてスタートした本コンペティションは、今年で5回目の開催となりました。

予選審査を経て、審査員である最先端の大学の教授や先生方とオンラインの観覧者に向けて、2022年10月18日にはHRテクノロジーソリューション部門4社、2022年11月2日にはピープルアナリティクス部門5社が最終プレゼンテーションを実施し、グランプリ受賞者の選出と表彰が行われました。

【公式ホームページ】
https://digital-hr.jp/


HR
テクノロジーソリューション部門


◆グランプリ

Beatrust
株式会社
【タイトル】機械学習を用いたキーワード抽出機能で、社内のテキストデータが活きた情報に!
【概要】テキスト・URL・ファイルなどから社員の特性やスキルを抽出し、人々を繋ぎます
プレゼンター:共同創業者 久米 雅人 氏

<ご発表内容>
・大企業の従業員は「色々な経験・スキルを持っていたとしても共有する機会がない」「誰が、どこで、何をしているのかわからない」「同じ会社でも人づての紹介がないと知り合えない」といった問題に直面している。
・また人的資本開示の重要性が叫ばれており、これを通じて経営レベルでは「マーケットからの適切な評価の獲得」「数字に基づいた客観的な人事意思決定の促進」「優秀な人材の登用・採用」といった課題を解決しようとしている。
・Beatrustでは、このギャップに対して従業員の課題にフォーカスすることで人的資本経営にも寄与することを目指している。
・従業員同士が自らのスキルや経験をすすんで共有しながら、繋がりあい助け合う社内デジタル環境をつくることを目指して、「社内の個と個をつなぐデジタルプラットフォーム」と「オープンでフラット。チャレンジすることを称える文化を作る」ことに取り組んでいる。
・具体的にはだれでも使いやすい人材情報検索プラットフォーム「Beatrust People」とプロフィール情報から回答者をマッチングするコラボレーション掲示板「Beatrust Ask」を提供している。
・これらの入力を楽にするために「すでに社内に存在している様々なテキストデータ」を利用した自然言語処理によるタグの自動抽出機能を開発した。

<受賞コメント>
こういった賞をいただくのは会社としても初めてなので嬉しく思っています。大企業の皆様に新しいコンセプトが受け入れられるかドキドキしながら起業したのですが、多くの方に使っていただけています。本日はありがとうございました。

◆ファイナリスト

株式会社Skillnote
【タイトル】ものづくり人材の力量を可視化し、計画的な育成により、技術力と品質向上を実現
【概要】日本の製造業が直面する社会課題「技能伝承」をスキルマネジメントシステムSkillnoteで支援
プレゼンター:代表取締役 山川 隆史 氏

<ご発表内容>
・製造業の現場向けスキル管理クラウドサービスを提供している。いま製造部門では再雇用者と新人の増加、中堅の不足が生じており、ベテランの退職に伴う品質トラブルや操業停止のリスクに直面している。
・社会課題である「技能伝承」の問題が解決できない理由として「失われるスキルが把握できていない」ことが挙げられる。管理すべきスキルは非常に多く、管理しきれていない企業が多い。
・プロダクトでは国内初のスキルマネジメントシステムとして、スキルの一元化・見える化で計画的な育成と配置を実現する。特に「誰がどんな技能を持っているのかを可視化」「継承すべきスキルの見極め」「育成計画の立案と計画の進捗管理」を重要視し、サポートする機能を開発している。データ分析により喪失リスクのある技能の算出も行う。
・ある素材メーカーではコアスキルの特定と計画的な技能承継の促進を行い、すでにコアスキルの6割を若手社員へ伝承した。

株式会社ZENKIGEN
【タイトル】独自AIを用いた「採用プロセス定量化」による採用DXプロジェクト
【概要】熟達面接官の実践知を抽出し、採用精度向上の仕組み構築に成功した採用DX最先端事例
プレゼンター:コーポレート本部マネージャー兼ZINZIENコミュニティマネージャー 清水 邑 氏

<ご発表内容>
・日本では新卒採用に年間2,000万時間を費やしているとされている(自社調べ)。さらに面接が属人的であることも課題であり、面接コミュニケーション品質は応募者の志望度に影響する。
・プロダクトでは「動画」×「AI」で面接プロセスを科学的に改善した。具体的には「面接自体の評価・面接品質の平準化」「結果指標だけでなく採用過程の可視化」といった課題の解決のために、「面接官の採用貢献度の可視化」「採用プロセス全体の定量化・改善」を行った。
・面接動画データをAI解析し、面接品質を定量化・可視化することで、データをもとに採用プロセス全体を最適化できる。
・面接品質の定量化・熟達面接官の実践知の抽出を行い、それをもとに「目指すべき面接官像の明確化」「採用フローの再構築に向けた取り組み」を進めている。

ハイマネージャー株式会社
【タイトル】パフォーマンス・マネジメントを実現するプラットフォーム「HiManager」
【概要】OKRや1on1、リアルタイムフィードバックによりエンゲージメントや生産性を向上
プレゼンター:代表取締役CEO 森 謙吾 氏

<ご発表内容>
・現在の日本のマネジメントはMBOを中心にした年次評価が主となっている。このような年間評価を軸としたコミュニケーション・フィードバックの少ないマネジメントでは「環境変化への柔軟な対応が難しい」「エンゲージメントを高めづらい」といった課題がある。
・解決方法として、OKRを中心とした、リアルタイムフィードバックを基にしたアジャイルなマネジメントであるパフォーマンス・マネジメントにより、「環境変化に対応し、生産性を向上」「コミュニケーション増加により、エンゲージメント向上」といったメリットを見込める
・プロダクトではツリー上にOKRを管理することができ、1on1やフィードバックの支援を行えるようになっている。また人事評価やアップデート(週報)、Slack連携といった機能も備えている。
・導入企業からはパフォーマンス・マネジメントによりモチベーションやエンゲージメントの向上が見られたとの声が聞かれている。
・今後はマネジメントをレコメンドするAIサービスへ展開していく予定であり、年次評価型マネジメントからパフォーマンス・マネジメントへの転換を推進していきたい。

◆審査員長 講評

早稲田大学政治経済学術院 大湾 秀雄 教授

今年も非常に特徴ある発表が多く、有意義だったと思う。特に今年は社会問題に取り組んでいる企業が多く、ハイマネージャー株式会社は職場の心理的安全性の向上、株式会社Skillnoteは技術の継承、株式会社ZENKIGENは面接の無駄の削減、Beatrust株式会社は職場のコラボレーション促進とどれも社会的に有意義な取り組みである。その中でBeatrust株式会社がグランプリとなった理由はコロナによってコミュニケーションが減少した時節にあっており、リスキリングの流れの一方で企業内にスキル情報が整理されていない現状をサポートするツールであることがある。長期的にはジョブ型雇用の進展に伴う人事の分権化に沿ったものであり、重要なプロダクトになると感じる。発表企業全体に対する課題としては、どの程度市場での優位性を保てるのかが論点になると感じた。また効果のエビデンスやロジックを明確に説明してほしい。これは顧客への説明においても有効な点であり、将来的にこのコンペティションに出場する企業も考慮してほしい。

◆審査員コメント

山形大学学術研究院 岩本 隆 産学連携教授
毎年、参加企業の幅が広がり、数も増えていっている。これは単なるデジタルHRのバブルではないのだと感じている。本日も領域の異なる4社が出場しており、各社は各セグメントでNo.1を取っているのだと思う。ただテクノロジーという観点で見ると、海外企業が同様のものをやっていたり、大手企業が社内で開発したりしている領域もあり、ぜひテクノロジーでの差別化を進めていただきたい。市場を作るだけではすぐに競合が出てきてビジネスの継続性がなくなってしまう。今後の4社に期待したい。

株式会社日立製作所 矢野 和男 フェロー
人をエンパワーすることは現在の日本の停滞を打ち破るために必要だと考えている。この20年、30年の日本の停滞は流動性がなく階層的な組織になっている内向きな従来の人事制度が時代の変化によって機能しなくなったことが原因ではないか。その中で新しい問題の捉え方とテクノロジーに挑戦しなくてはならない。本日の4社はそれに挑戦しており、日本社会を根本的に見直す力になってほしい。

早稲田大学理工学術院 創造工学部経営システム工学科 後藤 正幸 教授
非常に評価の差をつけるのが難しい4社だった。それぞれ違う観点のプロダクトであり、どのように評価するべきか議論が尽きなかった。ハイマネージャー株式会社のプロダクトは最も利用が進んでおり、現場での評価が高い点が特筆できる。今後の発展を期待している。株式会社Skillnoteは部署横断の全社的な分析可能性の向上のためのツールとして有用かつ実際にニーズのあるものだと感じた。株式会社ZENKIGENは面接官の同意など課題も残るが、技術的に非常に高い点が評価できる。この技術はプロダクトとしては謝罪会見・大学PRなどへの横展開が期待できるのではないか。グランプリのBeatrust株式会社にはあえて課題を述べると、タグの自動抽出は様々な領域で研究されているため、今回の目的に沿ってHR分野に特化した場合、どのようなタグを抽出するべきなのかについて、理想像を定義できるとなお良いと感じた。

明治学院大学経済学部 児玉 直美 教授(元 経済産業省)
毎年発表を楽しみにしているが、3年前の時点では革新的だった技術も、現在では一般的なものになっていると感じる。ただ非常に実用的かつ社会的意義があり、企業で使われる技術に発展してきているのではないか。4社全体に対して求めたい点が2つあり、1つはプレゼンテーションの中で、データの利活用を推進する立場であるにも関わらず、プロダクトの効果を定量的に示せている企業が少なかったため改善を期待したい。もう1つはデータ収集・蓄積のインセンティブをどのように設計するかも重要で、システムが利用されるか否かを左右するため、その点への工夫も今後期待したい。

 

 

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