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2019.11.10

【開催レポート】Digital HR Competition 2019

2019年10月24日(木)
於)東京大学 伊藤国際学術研究センター 伊藤謝恩ホール

【公式ホームページ】
https://digital-hr.jp/
【開催概要】
https://peopleanalytics.or.jp/2019/09/20/finalist-2/
HR領域におけるデータ活用の取組みは、未だ大きく広がるには至っていません。その理由としては、HRという性質上、どうしても事例がオープンになりづらいという面があるでしょう。
そこで、好事例を共有し、より高い成果を求めていくべく、競い合い、学び合う場としてスタートした本コンペティション。今年で2回目の開催となりました。2年目にしてHRテクノロジー・ピープルアナリティクスへの理解と取組みの大きな広がりを改めて示す機会となりました。
2019年10月24日、審査員に加え、多くの観覧者が見守る中、予選審査を通過したHRテクノロジー部門3社、ピープルアナリティクス部門5社のファイナリストが最終プレゼンテーションを実施。両部門のグランプリ受賞者の選出と表彰が行われました。


<HRテクノロジー部門>

栄えあるグランプリに輝いたのは、以下の会社様のご発表でした。

株式会社ギブリー「track」
スキルデータで最適な組織をつくる
プログラミング「学習・試験」プラットフォーム
取締役trackプロダクトオーナー 新田章太 様


<ご発表内容>
・今、日本をはじめ世界でデジタルトランスフォーメーションが必要とされ、エンジニアの需要がますます高まっている。
・しかし、プログラミング言語の進化や多様化への対応が複雑化し、結果的に属人的な仕事になっていることも多い。その一方で、企業の中でトランスフォーメーションの推進者である人事や経営者は、エンジニア育成のためのカリキュラムを作ることができない、エンジニアのプログラミングスキルを正しく評価できないというのが実情。
・「track」はそんな問題を解決する、プログラミングの「学習・試験」コンテンツと自動採点システムを備えたプラットフォーム。
・1000を超えるテクノロジーに特化した様々な試験コンテンツを搭載。多様化するプログラミング言語にもすぐに対応できる容易な更新性・拡張性が特徴。
・試験問題などの運用・管理も容易(ex.簡単に問題を選定し求職者に配信、スキルの可視化が可能)。
・採点はシステムが自動で行う(プログラミング実技に関しても動作性と修復容易性でプログラムソースコードの品質を自動採点)。
・多くの研究機関・企業からコンテンツをどんどん追加され、それを会員企業が利用できる仕組み。現在全世界50か国以上、20万件以上のスキルデータの蓄積がある。
・タレントマネジメントシステム、求職者管理システムへの連動、展開も視野にいれた開発も進めている。

<受賞コメント>
素晴らしい賞をいただき、ありがとうございます。
このソリューションも発展途上の部分は、まだまだたくさんあると思っていますが、データプラットフォームとして、あるいはエンジニアのスキルを可視化するという特殊な領域においてということで評価をいただけたのでないかと思っています。
これからも皆様と共に勉強させていただき、将来を担うエンジニアを目指す人材を伸ばすことに貢献していきたいと思っています。


また、惜しくもグランプリとはなりませんでしたが、ファイナリストに選出された会社様とそれぞれのご発表内容は、以下のとおりです。

ソフトバンク株式会社
ワークライフインテグレーションを実現するパルスサーベイ
『Circularity Pulse』
人事本部 人材戦略部 デジタルHR推進課 課長 中村亮一 様


<ご発表内容>
・元気にいきいきと働きたいというのは誰にも共通する願い。しかし、過労死、ハラスメント、メンタル不全など、会社の中で起きる不幸は減っていない。この状況を変える1つの方法論として、日々変化する社員のコンディションを把握するパルスサーベイに着目した。
・ワークとライフは「バランス」ではなく、「サークル」であるというCircularity の心理学術分野の根拠をもとに「Circularity Pulse」を設計。
・特徴は2点。組織の状態ではなく個人の「元気」を把握するために、①仕事だけでなく、生活面・健康面も把握(12の因子で把握) ②サーベイの上司と部下とのコミュニケーションためのツールとしたという点。
・会社の中の不幸をなくすためには、まずは何が起きているかを知ること、そして寄り添うことが基本。
・静的な人事データと動的なパルスサーベイのデータを掛け合わせ、よりパーソナライズされた予測ができるようにしていきたい。


株式会社トランス
機械学習(AI)が採用候補者の入社後活躍・定着を予測する
「TRANS.HR」
代表取締役 塚本鋭 様

<ご発表内容>
・「面接ではよかったのに、入社後はあまり活躍をしていない」あるいは「すぐ辞めてしまった」という話をよく聞く。これは採用時のミスマッチの問題であり、それによる社会全体の損失も無視できないくらい大きい。
・「TRANS.HR」は、そんな状況を改善する方法の1つ。入社後に活躍する人材が採用時点でどんな特徴を持っていたかを明らかにし、機械学習を用いて入社後評価や早期退職の予測を行うシステム。
・特徴は3つ。①機械学習による適性検査と入社後の活躍の関係性を抽出可能、②クラウド上で包括的なモデルを構築可能、③HRデータに特化したアルゴリズム。
・また、既存社員との類似性を示すことができるので採用する人物を具体的にイメージできる、配属先ごとに活躍度を予測できるという、配置のための情報も提供。
・「TRANS.HR」の利用が広がれば、企業の枠を超えたマッチング(例:Aさんは、B社よりもC社のほうが活躍できる)にも活かし、社会全体の生産性向上にも活かすことができるのではないかと期待している。


<ピープルアナリティクス部門>

栄えあるグランプリに輝いたのは、以下の会社様のご発表でした。

株式会社村田製作所
センシングプラットフォーム“NAONA”を活用した
採用面接におけるコミュニケーションの可視化
人事部グローバル企画課チームリーダー 中島彰 様

<ご発表内容>
・採用面接の役割は、「見極め」と「動機づけ」。アンケートの分析から、自社の面接は「見極めはできているが動機づけは改善の余地がある」という課題を認識した。
・どんな面接が行われたときに動機づけができるのかを、自社のセンサー技術を応用して開発したセンシングプラットフォーム”NAONA“システムを活用して把握した。
・”NAONA“システムは、メインは1on1ミーティングの質の改善に活用するシステム。様々なセンシングポイントがあるが、例えば、動機づけに効果的な発言のテンポ、感情値(声の特徴量)を把握できる(例:面接での動機づけに比較的成功している比較企業では、発言のテンポは長いものも短いものも散らばりがあったのに対し、村田製作所の面接は発言テンポが短いものが多いことがわかった)。
・発言のテンポのバランスがよく、感情値の高い面接になるのは、1対1の面談の場合。また、入社意欲に影響を与えるのは入社後に任される仕事が具体的にイメージできた時であることもアンケートから把握できた。
・その分析結果を踏まえた対策として、1対1の面談形式で仕事内容を詳しく説明する面談を通常の面談の後に実施。
・動機づけスコアの低い面接官には、“NAONA“の客観的データを提示すると共に、動機づけスコアの高い面接官のロールプレイを見るなどの意識改革を中心にした面接官研修を実施。
<受賞コメント>
グランプリ受賞に、まさかと驚いています。“NAONA”は新規事業としても取組んでいるシステムなので、これを弾みにして来年はソリューション部門で挑戦できるように、実績を積んでいきたいです。
今回HRで使用したものは自社テクノロジーであったため、自由度が高いというメリットがあった一方で、(当該テクノロジーで)できることに優先して取り組んだというところは課題でもありました。村田製作所は“面白テクノロジー”をたくさん持っている。もっと経営視点で、人事課題に対してテクノロジーでの対策方法を深掘りしていきたいと考えています。


また、惜しくもグランプリとはなりませんでしたが、ファイナリストに選出された会社様とそれぞれのご発表内容は、以下のとおりです。

株式会社TOKAIマネジメントサービス
チームのパフォーマンス向上アプローチ
人事業務部 人事運用課 桝本拓弥 様

<ご発表内容>
・「エンゲージメント」「チーム」「チームメンバー」という3つの軸で、ピープルアナリティクスを行い、チームのパフォーマンスを上げる要素を捉え、対策に結び付ける取り組みを実施。
・「エンゲージメント」・・・サーベイを月1回実施。変化しやすい要素と変化しにくい要素を把握し、改善点をリーダーにフィードバック。対策を提案して実施し、その後のサーベイ結果の変化を把握している(例:達成感の実感が薄いチームでの取り組み、エンゲージメントサーベイの結果推移の紹介等)。
・「チーム」・・・各種データを取得してチームの状態を解析し、チームリーダーに結果をフィードバック(例:メンバーと上司の類似性が高いほうが仕事をしやすいのではないか、メンバーの役割や位置づけが明確な方が仕事がしやすいのではないか等の仮説に基づいて分析)。
・「チームメンバー」・・・個人別にどの能力を開発していくべきかを可視化し、能力開発の方法を本人にフィードバック。本人が自己分析をしたうえで、目標設定に反映。
・2018年に、この取り組みをスタートし、2020年に効果測定実施予定。
・トライアルと実績を積み重ね、レコメンドの充実や分析結果を踏まえた施策の実効精度を高めていきたい。


パナソニック株式会社ライフソリューションズ社
人を起点にしたワークプレイスの実現
(HR Tech×ワークプレイス融合へのチャレンジ)
マーケティング本部テクニカルセンター 主事 豊澄幸太郎 様
技術本部イノベーションセンター 主務 北口沙也香 様

<ご発表内容>
・これまではオフィス空間の広さから机の配置などのワークプレイスを決定することが一般的だったが、最近はワーカーの働き方からオフィスを設計するケースが増えている。そこで、ワーカーの働き方を把握する部分にテクノロジーを活用し、PDCAを回してオフィス改革を実施した。
・LPS(GPSの社内版のようなもの)を使用してワーカーの動きを把握(滞在場所と滞在時間)。
・チームごとに集計して、働き方の特性を把握した上、ワーカー向けのアンケートを実施し、ワーカーの実感値と照合し、理由を収集。
・改善すべき課題を設定して、対策を行う(例:稼働が少ない休憩スペースの稼働促進。照明を変えることによって空間のバリエーションをつくり、ワーカーがより自分のお気に入りのスペースを選んで働けるようにした)。
・今後はさらなる調査と取り組みを通じて、より精度を高めたい。またそのためにはワークプレイスが簡単(大きなコストをかけず)に拡張、変更できるものであることも大切。そんな開発を目指していきたい。


TOYOTA TSUSHO NEXTY ELECTRONICS(THAILAND) Co., LTD.
Asian Identity Co., LTD
従業員定着予測と意識の見える化を活用したタイ国における日系企業の現地化への挑戦
TOYOTA TSUSHO NEXTY ELECTRONICS(THAILAND) Co., LTD
HR&GA Department General Manager 楠本浩史 様
Asian Identity Co., LTD
Founder & CEO 中村勝浩 様

<ご発表内容>
・自社はタイでソフト開発をしており、約400名の社員のうち302名がソフト開発のエンジニア。
・タイ人の特徴として、①失業率が低くJob hoppingが普通、②階級社員の名残もあり上司に本音を話さない、③摩擦を生むようなコミュニケーションを嫌うというのがあり、退職者の事前兆候がつかみにくい。タイ人メンバー、タイ人マネジャーへのフィードバックも難しい。この状況に対してデータドリブンで有効な取り組みができないかと考えた
・3つの挑戦として、①定着予測、②(①の結果に対する)組織の活性化に向けたPDCAを定型化、③実装化を実施。
・エンジニアとして実績出すには最低1年の定着が必要。そのために過去1年以上在籍しているエンジニアの特徴の仮説をもとに、定着にネガティブに影響を与える因子を70個程度の変数データから抽出・特定。
・上記をダッシュボード化し、各因子の影響度合いと、トータルとして1年後に在籍していない確率を一覧化。
・因子の短期的な変化を把握するために毎月パルスサーベイも実施。パルスサーベイの結果は、もうすぐ1年分溜まるので、(現時点で得られた結果と)統合して分析して予測精度を高めていきたい。
・これらのデータ分析結果をタイ人マネジャーに提示し、必要なマネジメント行動をサジェスチョンするなどして、タイ人マネジャーの育成にもつなげていく。
・取組み方法は発展途上。他社の取組を学び、ASEANから好事例を発信できるようにしてゆきたい。


株式会社三菱ケミカルホールディングス/三菱ケミカル株式会社
リテンション分析
~多様な人材がいきいきと働ける会社を目指して~
人事部 グローバルHR担当部長 渋谷正吉 様
ピープルアナリティクス 大村大輔 様

<ご発表内容>
・三菱ケミカルと三菱ケミカルホールディングスの共同プロジェクト。
・「従業員のリテンション」「人事部員のデータリテラシーの向上」という2つの目的をもって、このプロジェクトに取り組んだ。
・プロジェクトの最終目的は、最適な人材マッチングのレコメンデーションを出すこと。
・三菱ケミカルの日本単体の約16,000名の2018年度のデータを分析。使用データは年1回のキャリア面談、人事データ。社員に事前に分析内容を告知して分析を実施。
・分析に使用したのは「R」。時間は多少かかったが、当初全く素人だった人事部員も、こういった分析
の感覚をもって回していけるようになった。
・「人事は変わらなければならない」というのは、今、皆が共通して強く感じている。変わるための技術や条件も、今足りないところがあるいとはいえ揃いつつある。そんな今をチャンスにして、どんどん挑戦をしていきたい


■審査委員長講評■

大湾秀雄先生
早稲田大学 政治経済学術院 教授

各社の取組にはそれぞれ一長一短があり、審査は非常に難しさを感じた。審査会でも議論が白熱し、結論を出すのが難しかったが、HRテクノロジー部門、ピープルアナリティクス部門それぞれでグランプリを選出することができた。

<HRテクノロジー部門 グランプリ>
〇株式会社ギブリー・・・3つの点を評価してグランプリに選出した。まず、①プログラミング教育という、非常にニーズが高い分野のサービスであること。②採点や運用を自動化、省力化しているという点。そのための技術的ないろいろなハードルを越えたという点。③展開性があるという点。
ここで蓄積された情報を基にして転職サービスに広げたり、プログラミングでどんな間違いパターンがあるかを把握したりして、それを教育面での改善にフィードバックしていくことで大きな価値を生み出すかもしれないという将来性を感じた。
その一方で、非常に手間がかかる事業であろうこと。そして無料の教育機会も世の中に多くある中で、採算性をどう確保するかは乗り越えなければならない課題、といった指摘もでた。

<ピープルアナリティクス部門 グランプリ>
〇株式会社村田製作所・・・2つの点を高く評価した。①テーマ設定:日本企業の面接の課題は多く指摘される中で、面接をどう改善するかをきちんと分析しているケースは少ない。その課題に取り組んでいること。②独創性:「動機づけと見極め」「面接者と応募者」という軸を使って問題点を明らかにしたという点。センサーという新しい技術を応用したということ。
できれば、アナログ的でもよいので、面接の中で交わされた情報や言葉についても分析できれば、もっと深い知見がだせたのではないか。

全8社のファイナリストの中で4社が人材獲得(採用、リテンション)をテーマにしたものだったことは、今の社会において、いかに人材獲得が課題であるかということがよく表れたものということができる。また、(ピープルアナリティクス部門において)機械学習を使った分析も昨年より増加した。昨年より取組みの裾野は確かに広がっている。
次は手法へのチャレンジだけでなく、どのようなデータをシステムに食べさせるか、結果をどう解釈して改善につなげるかまで含めた形で分析を続けていってほしい。

ピープルアナリティクスやHRテクノロジーは、従業員が幸福になることを目指して取組みを進めるということが基本。今後も、この基本を大事にして分析を進めていってほしい。

来年度はさらに高いレベルの成果が出てくることを期待させるような内容だった。
チャレンジしてくれた皆様にお礼をいいたい。ありがとうございました。

 

■審査委員コメント(コメント順)

児玉直美先生
日本大学経済学部経済学科 教授
元 経済産業省

本日は、大変興味深い報告を聞かせていただいてありがとうございました。
これまで、人事の世界は「勘と経験」の世界と言われてきました。ここに科学の視点、データ分析の視点が入ってきたのは、やはり良いことだと改めて思いました。
学生時代、私は気象学を専攻していました。気象学はビックデータを使って将来の気象を予測するという学問なのですが、どんなに精度良く気象を予測分析しても、上位5%くらいのトップの予報官よりは劣る、ただ残りの95%の予報官よりいい予測ができる、と言われています。過去に起こったことと似たようなことが起これば、データによって未来を予測できますが、過去に起こらなかったことについてデータから予測ができません。想定外の事態については、人間の判断が必要になります。
人事の世界にデータ分析を活用するということについても、データ分析によって得られる結果は、能力がトップクラスの人事担当者の予測より劣っているかもしれません。しかし、経験の浅い人事担当者より、きっといい仕事ができるはずです。底上げという意味では、データを使うことによって確実に今までよりずっと質の良い人事ができるようになると信じています。

 

後藤正幸先生
早稲田大学理工学術院
創造工学部経営システム工学科 教授

本日は本当にお疲れ様でした。私は、プレゼンテーションの講評を補足させていただきます。
ピープルアナリティクス部門では、最後まで審査に残ったのは村田製作所さんと三菱ケミカルさんでした。甲乙つけがたく審査委員の間でも激論になりました。三菱ケミカルさんの取り組みに対して、最後に差がついた点を説明させていただきます。
1つ目は、離職者を予測するための変数として、制御可能なものをもっと取り入れられればよかったという意見がでました。
また「離職者の識別」という問題は、非常に少ないパーセンテージのものを検出する、すなわち「在職者」と「離職者」の間でデータ量が非常にアンバランスな問題です。このような問題において、Elastic Net等の機械学習で、アンバランスドデータをそのまま分類しようとすると精度上の問題が生じます。例えば「1000人のうちに10人が離職する」という状況に対しては、「全員離職しない」という意味のない予測をしたとしても99%が正解になってしまいます。このようなデータ間のアンバランスさをどのように処理したかについて、何らかの対処はしたと思いますが、その説明が聞きたかったという意見がありました。
もう1点はプレゼンテーション中にもあった、「離職と予測された人数に対し,実際離職したのはわずか」という結果に対し、社内の反応があまり芳しくなかったというお話についてです。私は、この部分については、非常に重要な情報を含んでいると思っています。確かに離職者を完璧に当てるのは統計的に困難です。ただ例えば、機械学習が「この100名は離職しそうだ」と判断したにも関わらず、その中で離職していない社員については、重点的にケアすべき社員であると言えるかも知れません。離職していない社員であれば追跡調査も可能ですので、そこをもう少し深掘りして、ヒアリングなどを通じた追加分析・調査していくと、さらに素晴らしい分析になったではないかと思いました。ただ、総じて分析は、とても熱心にやられていて、とてもよかったと思いました。

 

矢野和男様
株式会社日立製作所 フェロー
東京工業大学大学院情報理工学院 特定教授

非常に皆さん熱心に、この分野に取り組んでいただいてありがとうございます。
釈迦に説法かもしれませんが、人事に求められるものが、非常に変わってきています。ファンクションを担うのではなく、経営変革・企業変革のトップドライブ役となっていかなければなりません。規格大量生産するモノやサービスの時代から、全く違うものが求められる時代になっていく。そんな時代に求められるのは、まったく異なる人材像・企業像です。ビジネスの動かし方もまったく違うものになっていくはずです。人事は、今までのやり方ではやっていけない。そのためにデジタル技術も大いに使っていこうというところです。
ですから人事の業務の精度をあげるとか効率化するよりも、もっと経営的な発想の取組があってもよかった。
もちろん、そうはいっても今までやってきたことを、大きく、しかもどんどん変えなければならないというところに、今、皆さん色々と挑戦しているのだと思います。その点ではいいことだと思っていますが、まだまだ加速してやっていくべきなのではないかと思います。
失礼になるといけないのですが、ソリューション部門のプレゼンテーションとピープルアナリティクス部門のプレゼンテーションを比べると、ソリューション部門のほうが内容も、発表者の熱量も高かったと感じました。その1つの大きな要因は、スタートアップ企業ないしそういった風土の企業であったということが大きかったのではないかと思います。大企業に元気がない、人材を活かしきれていないシステムになっているのではないかと思いました。
それを変えていくのが、まさにHRテクノロジーだと思っています。ぜひ、ここをどんどん加速してやっていきましょう。

 

岩本隆先生
慶應義塾大学大学院
経営管理研究科 特任教授

審査には4つの軸があり、どの軸を重視するかによって最終的な評価が変わるような難しさがありました。審査委員長の大湾先生もかなり悩まれたのではないかと思います。間違いなく評価できる点は、こういったイベントを開催することによってかなりすそ野が広がっているということです。
実は私は、ワークプレイスや業務においてAIやロボットをどのくらい使っているかというテーマで、世界の10地域で調査をした結果をある企業から頂いて、その分析を行っているのですが、日本は最下位でした。インドや中国は日本の4倍以上で、80%近くが「AIやロボットを使っています」という回答でした。すそ野が広がっていることは喜ばしいことですが、世界レベルという観点では、まだまだやるべきことはたくさんあるように感じています。
また来年、よりすそ野も広がり、レベルもあがった提案が出てくることを期待しています。どうも皆さん、お疲れ様でした。

 


文:一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会 研究員 植松真理子

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