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2021.12.24

【開催レポート】Digital HR Competition2021 HRテクノロジー部門

Digital HR Competition2021

「Academia」(理論)と「Technology」(技術)と「Service」(実務)の垣根を越えて、「労働市場における社会課題の解決」をテーマとして、好事例を共有し、より高い成果を求めていくべく、競い合い、学び合う場としてスタートした本コンペティションは、今年で4回目の開催となりました。

予選審査を経て、審査員である最先端の大学の教授や先生方とオンラインの観覧者に向けて、2021年10月19日にはHRテクノロジーソリューション部門4社、2021年11月2日にはピープルアナリティクス部門4社が最終プレゼンテーションを実施し、グランプリ受賞者の選出と表彰が行われました。

【公式ホームページ】
https://digital-hr.jp/

 

HRテクノロジーソリューション部門


 

グランプリ
VISITS Technologies株式会社
【タイトル】イノベーションやDXに不可欠な事業創造人材を可視化する「デザイン思考テスト」
【概要】不可能と考えられていた人の創造性を定量化する独自技術を開発(日米特許取得済)
プレゼンター:CEO 松本 勝 氏

 

<ご発表内容>
・創造性を科学し、世界中の誰もが社会価値創造に貢献できるエコシステムを構築することをミッションに、創造性を定量化することを目的としてデザイン思考テストを作成した。
・デザイン思考テストはこれまで測定が難しかった人の創造性を客観的・短時間に測定するツールである。
・企業においてはこれからの時代に即した⼈材戦略の構築、受検者においては⾃分の創造性に気づくといった価値を提供している。
・テストは創造セッションと評価セッションで構成しており、結果を独自技術で分析しスコアリングしている。
・評価セッションのデータの組み合わせから多次元非線形方程式を用いて評価者の目利き力を推定し、スコアリングに活用している。これが日米特許技術となっている。
・ある戦略コンサルティングファームの新卒採用においては、ケース面接での評価点とデザイン思考テストのスコアに強い相関が確認でき、採用基準に導入いただくことで採用工数を大幅に削減できた。
・「創造性は重要である」という認識と5W1Hのフレームワークの共通性から、グローバルの展開が比較的容易である。
・今後はデータの蓄積を通じて創造セッションのみでスコアを予測可能にする等の施策を打っていく。

<受賞コメント>
このような素晴らしい賞をいただき大変嬉しく思っております。こういったサービスが儲かるのではないかということではなく、これからの日本における教育の課題を考え、子供にとって必要なことは何なのかを考えた末に、創造性・課題を発見して解決する力を日本の子供たちみんなに身に着けてほしいという思いで起業し、サービスを作りました。当初はサービスに対して厳しい意見もいただきましたが、近年大きく世の中が変わり、創造性のある人材が必要といった意見を多くいただくようになりました。受賞に恥じないよう、世界に日本発のグローバルサービスとして広げていきたいと思いますので、引き続き応援のほどよろしくお願いいたします。


 

ファイナリスト
株式会社人的資産研究所
【タイトル】優秀人材を入社・戦力化へ導く HaKaSe Onboard
【概要】個々の特性に合った最適なオンボーディングで、内定承諾率と戦力化率の向上を実現
プレゼンター:代表取締役 進藤 竜也 氏

<ご発表内容>
・人口減少や少子化により、戦力層の不足・デキる若手の離職といった課題が生じている。その一方で、長期雇用を前提としていた日本には早期戦力化のノウハウがない。このことから今後は早期戦力化の技術としてのオンボーディングが重要になると考えている。
・HaKaSe Onboardは職場で若手人材が育つ科学的アプローチを提供する。具体的にはピアレビューによるフィードバック機能と相性分析による適応プラン・最適配置といったマッチング機能がある。
・HaKaSe Onboardの導入事例では、現場での効率的な成長を支え、1年後の高評価者が2倍になった事例等がある。
・今後の発展性としては「人材移動のセーフティネット」「イノベーション人材の活性化」「採用・育成への接続」といったものが挙げられる。


 
ファイナリスト
株式会社I'mbesideyou
【タイトル】リモート経営に最適化した従業員のウエルビーイング推進ソリューション
【概要】リモートワーク下で従業員のメンタルを守りウエルビーイングを実現するサービスのご紹介
プレゼンター:代表取締役社長 神谷 渉三 氏

<ご発表内容>
・「社会全体を学校にする」をビジョンとして、コロナ時代のペインをゲインに変えるサービスを展開する。具体的には、オンライン上の動画をAIで解析し、一人一人をより深く理解することを目指している。
・動画解析によるアラートをもとに日々の行動変容を促していく。アンケートではなく観察することで正確に状況把握ができる。
・MTG出席者の一人一人の反応をリアルタイムで見える化することを通じ、一人一人のメンタルヘルスを守り、ウエルビーイングを実現する。
・動画全体の多角的なA/Bテストで解約検知ロジックを生成。メンタルヘルス判定では正解率95%を達成した。
・設立16ヶ月目で1300万円/月の売上・単月黒字を達成。国際特許を100件以上出願。
・今後の展開として、日本で調達した資金を活かし、インドで人材とデータを獲得し、グローバルで大きくマネタイズする方針である。


 

ファイナリスト
株式会社シンギュレイト
【タイトル】イノベーションを目指す組織サーベイと1on1ツール Ando-san
【概要】KGI・KPIとしての組織サーベイとKSFである1on1による改善サイクル
プレゼンター:代表取締役 鹿内 学 氏

<ご発表内容>
・イノベーションの鍵は信頼にあると考えている。この信頼は、心理的安全性を超えて、不安の中にこそあると捉えている。不確かな中でも新しい関係を作れることが信頼の行動特性である。
・信頼を計測するための組織サーベイを提供している。ここでは科学的な手続きを重視し、品質評価をした質問票を用意している。
・組織サーベイには信頼係数(クロンバックのアルファ)という品質の評価指標があり、これを把握・公表していくことが重要と考えている。
・1on1の音声データを活用したツールとしてAndo-sanを提供している。話し方データを分析し、マネージャーとメンバーの発言比率やディスカッション・コーチング・雑談・ティーチングといった会話のモードを可視化する。これは話し方に対する助言を行い、信頼の実践をおこなえるサービスであると考えている。
・組織サーベイと1on1の両輪でイノベーション組織の構築を支援する。


 

審査員長 講評

早稲田大学政治経済学術院 大湾秀雄教授

全体として、ウィズコロナの時代に重要性の高まったコミュニケーション等の社会課題の解決に寄与するサービスとなっており、その点で各社ともに高い評価となった。その中で、VISITS Technologies株式会社は今の日本に最も必要なものを提供しているという観点でより高い評価になったものと理解している。株式会社人的資産研究所については、汎用性の高いサービスに発展することを期待する。どのようなチームの生産性が高いかはまだ汎用的な解が存在せず、規模・タスクの性質・企業風土に影響される。それをAIの学習によりサポートできると良い。株式会社I'mbesideyouはメンタルヘルスへの対応にデータを使うとき、対応が必要な層が利用を拒否する層と重なった場合、問題解決力が低下してしまうことが懸念である。その点で工夫を重ねてほしい。株式会社シンギュレイトは、1on1が重要となった現在、その評価ツールとして評価している。ただしまだ効果の検証が足りていない点が今後の改善点と感じる。計測・行動変容・効果検証の一連の流れを設計段階で取り入れる必要がある。また効果検証には信頼性の高いRCTを用いると良い。全体に、マネタイズを急がずにしっかりと検証を重ね、業界のリーディングカンパニーとして市場の信頼を得ていってほしい。

審査員コメント

慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 岩本隆特任教授
コロナ禍でHRテクノロジーの既存のソリューションも需要が増えているが、新しいニーズも出てきており、本日のプレゼンテーションではそれが捉えられていると感じた。どの切り口でソリューションを出すかが重要だが、VISITS Technologies株式会社はSociety5.0におけるクリエイティビティの重要性にフィットしていたことが受賞に繋がった。また株式会社I'mbesideyouも力強くグローバル展開しており、印象に残った。株式会社人的資産研究所はセプテーニグループでの成果が申し分なく、株式会社シンギュレイトの取り組みテーマも面白かった。数年後に市場での実績ができれば、説得力が増すのではないか。いずれの企業も今後に期待できるサービスだと感じた。

明治学院大学経済学部 児玉直美教授
株式会社人的資産研究所について、360度評価は既にあると思うが、そのデジタル化と理解した。実際に運用する段階では上司には受けが良いが、部下からは悪い人や、社内・社外で評価の異なる人材がいるため、評価者が誰かは評価への影響が大きいと感じる。その点は今後の課題ではないか。VISITS Technologies株式会社について、創造性の計測は画期的で重要だと思う。今回のプレゼンでは、目利き力や創造性向上のメカニズムが理解しづらかった。株式会社I'mbesideyouはコロナ禍ならではのテクノロジーで面白いと感じたが、一方で、表情良化・悪化、会話量減少が読み取られている怖さも感じた。集計されたデータとして処理されるのであれば問題はないのかもしれない。株式会社シンギュレイトについては、信頼を測るアイデアは面白い。現在は、発言比率と面接モードの比率のみが測定に使われているが、他の情報も使うと良いのではないかと感じた。

早稲田大学理工学術院 創造工学部経営システム工学科 後藤正幸教授
いずれの発表もレベルが高く、技術の優劣というよりは短い時間の中で理解しやすい説明であったかが結果を分けたと考えている。株式会社人的資産研究所について、フィードバックとマッチングの技術によるサポートは有効だと考えている。一方で、若手人材の早期戦力化がどの程度達成されたのかが説明の中では不明瞭に感じられ、この点が明確になるとさらによかった。VISITS Technologies株式会社はいまの日本に必要な要素として創造性はインパクトがあり、ポテンシャルを引き出すようなツールだと感じられた。今後は効果測定を学術的に検証していくフェーズだと理解している。株式会社I'mbesideyouはサービスがわかりやすくグローバル展開も見据えており、評価が高かった。ただメンタルヘルスの評価に表情データを利用することに拒否感があるユーザーもいるだろう。プレゼンテーションに対する反応の定量化等への利用では強力なツールとなる可能性を秘めている。株式会社シンギュレイトについては、信頼という着眼点が良く、組織サーベイと1on1のループも良いロジックである。この2点の関連性についてより詳しく説明しても良かったのではないか。

 

 

 

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